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MONTHLY REPORT — 2026 / 07
業界月次レポート

業界月次レポート 2026年7月号

2026年7月のチケッティング業界動向。ぴあ総研が市場規模を8,564億円に大幅上方修正、2035年1兆円台予測、2.5次元舞台市場の拡大、東京ゲームショウの10社連動販売。

Ticketing Lab 編集部 2026年7月9日 読了時間 約10分

EXECUTIVE SUMMARY — 本号の要旨

2026年6月17日、ぴあ総研が驚きの調査結果を公表した。2025年のライブ・エンタメ市場規模は8,564億円、対前年12.6%増で3年連続過去最高を更新——6月号執筆時点で「8,100億円予測」と紹介したばかりの数値が、確定値の発表で一気に上方修正された。さらに2035年には1兆1,000億円規模という予測も打ち出され、業界は「新常態」に入りつつある。一方で、2.5次元舞台市場は283億円(2023年)から成長を続け、東京ゲームショウ2026ではプレイガイド10社連動販売という大型IP興行の新モデルも動き出した。本号では、この「大型化・高付加価値化」が中小主催者にどう影響するかを、編集部視点で読み解く。

今月の業界総括

ぴあ総研の市場データ発表と、大型IP興行の販売スキームが業界の話題を席巻。

2026年7月は、業界の「規模感の書き換え」が起きた月だった。ぴあ総研が2025年の市場規模を8,564億円(前年比12.6%増)と発表し、2035年には1兆1,000億円に達すると予測。6月号執筆時点(6月10日)で紹介した予測値「8,100億円 / 2030年8,700億円」からわずか1週間で大幅上方修正され、業界全体の景気感が数字で裏付けられた形になった。

同時に、東京ゲームショウ2026が「一般公開日入場券をローソンチケット・ぴあ・イープラス・セブンチケット・アソビュー!ら10社連動で販売」する新スキームを発表。1つの大型IPを複数のプレイガイドで並列販売するモデルは、コンサート・スポーツでは一般的だが、演劇分野でも今後増える可能性がある。

2.5次元舞台市場も見逃せない。ぴあ総研の最新統計で283億円(2023年)と過去最高を更新中で、『チェンソーマン』『SPY×FAMILY』『キングダム』『鬼滅の刃』など大型IP舞台化が7月〜8月に集中。「大型化・高付加価値化」が業界の新常態になりつつある一方、中小主催者への波及効果は限定的で、二極化がさらに進む可能性もある。

今月の注目ニュース

業界の構造に影響する動きを、編集部が独自にピックアップ。

1. ライブ・エンタメ市場規模、8,564億円に上方修正——2035年1兆円台予測

ぴあ総研は6月17日、2025年の国内ライブ・エンタテインメント市場規模を8,564億円(前年比12.6%増)と発表。3年連続で過去最高を更新した。動員数は9,223万人(同7.7%増)、公演回数は10万820回(同6.0%増)で、公演回数は2019年以来6年ぶりに10万回台を回復。将来予測も上方修正され、2035年には1兆1,001億円という初の1兆円台到達を予測している。

編集部の視点:6月号執筆時(6月10日)の予測値「2025年8,100億円 / 2030年8,700億円」から、たった1週間の発表で一気に数字が跳ね上がった。特に注目すべきは「高付加価値化」による成長モデルという総研の分析。ぴあ総研自身が「中規模ホールの不足」「舞台技術者不足」を成長リスクとして挙げており、市場拡大の恩恵は大型・高単価公演に集中すると読み解ける。中小主催者にとっては「市場は伸びているのに現場は厳しい」という体感の乖離が続くリスクがある。

2. 東京ゲームショウ2026、プレイガイド10社連動販売スキームを発表

東京ゲームショウ2026(9月17日〜21日開催)の入場券販売スキームが公開された。1日入場券・特別割引チケットは、ローソンチケット、アソビュー!、Stagecrowd、チケットぴあ、JRE MALL、CNプレイガイド、セブンチケット、イープラス、チケミー、アニメイトの国内10社で連動販売。海外向けはTrip.comが窓口となる。新設のプレミアムチケット(3万円)や、純金メダル付きの「30周年アニバーサリーチケット」(330万円)はローソンチケット・アソビュー!が独占販売する構造。

編集部の視点:大型IP興行における「プレイガイド並列販売」の典型例。1つの興行を10社で分散販売するのは、購入導線を最大化して抽選外れを防ぐと同時に、各社の会員基盤にリーチを広げる狙いがある。舞台公演でも、大型IP舞台化(『チェンソーマン』『鬼滅の刃』等)ではこのスキームが標準化しつつあり、1社独占モデル → 複数社並列モデルへの構造変化が加速する可能性がある。中小公演にとっては真似のできない仕組みで、大手と特化型の棲み分けは今後さらに明確になる。

3. 2.5次元舞台市場、7〜8月に大型IP舞台化ラッシュ

2026年7〜8月は、大型IP舞台化が集中する時期となった。『チェンソーマン』-レゼ篇-(7〜8月、東京・京都)、『SPY×FAMILY』ミュージカル続編「爆弾犬篇」「豪華客船篇」、『キングダム』舞台化第2弾『HiGH&LOW THE 戦国』アナザーストーリー、『成瀬は天下を取りにいく』舞台化など、ぴあ舞台ページには話題作が並ぶ。ぴあ総研の最新統計では、2.5次元舞台市場は283億円(2023年)で3年連続過去最高。動員数は289万人、上演本数は236本に達している。

編集部の視点:2.5次元は推し活文化との相性の良さで継続的な成長を実現している。原作IPの持つファンダムが、リピート観劇・グッズ購入・SNS拡散の全てを牽引するビジネスモデル。舞台チケッティング業界にとっては、大手プレイガイドが強みを発揮する分野であり、『集客の効率化』を追求するなら大手、『顧客資産化』を目指すなら特化型という選択軸がさらに明確になる。

4. 舞台技術者不足が業界の構造的リスクに——ぴあ総研も指摘

ぴあ総研の2025年市場調査発表では、成長リスクとして「舞台技術者の不足」「中規模ホールの不足」「施設の老朽化」が明示された。特に舞台音響の分野では「このままでは2〜3年後には業界がきちんと機能しなくなる可能性」も一部インタビューで指摘されており、供給側の構造課題が浮き彫りに。

編集部の視点:市場規模の拡大=現場の潤いではないという典型例。大手興行は人材と会場を優先確保できるが、中小公演は舞台技術者確保・会場押さえで苦戦する構造。この問題はチケッティングサービス選定の観点でも重要で、運営工数を極小化できるサービス(=現場スタッフの人件費を削減できる選択肢)の価値が相対的に高まる。ACTぴっと・こりっちチケット!のような「関係者管理・当日精算・受付運営を効率化する機能」の重要性が改めて注目されるべきだ。

市場データの動き

数字で見る業界の現在地——6月号発表の予測値が一気に書き換えられた。

8,564億円
2025年市場規模(確定)
前年比 +12.6%(3年連続過去最高)
9,223万人
2025年動員数
前年比 +7.7%
11,001億円
2035年予測(新規予測)
初の1兆円台到達へ

ぴあ総研が6月17日に公表した最新調査結果によれば、2025年のライブ・エンタメ市場は8,564億円(前年比+12.6%)で3年連続過去最高を更新。動員数9,223万人(+7.7%)、公演回数10万820回(+6.0%)、と全指標で好調が続く。公演回数の10万回台回復は2019年以来6年ぶり

6月号執筆時点(6月10日)の予測値「2025年8,100億円 / 2030年8,700億円」は、確定値の発表で大幅上方修正された。新たな予測では2030年推計8,700億円→2035年1兆1,001億円となり、初の1兆円台到達という節目を打ち出した。

2.5次元舞台市場は、ぴあ総研の最新統計で283億円(2023年、前年比+7.9%)、動員数289万人、上演本数236本——いずれも過去最高を更新中。舞台芸術全体の中で最も成長率の高いカテゴリと言えるが、市場が集中する一方で、小劇場・演劇(ジャンル横断)の統計はまだ整備途上にある。

解釈:数字は好調だが、ぴあ総研自身が「舞台技術者不足」「中規模ホール不足」「施設老朽化」を成長リスクとして挙げている点は見逃せない。市場拡大の恩恵は大型・高単価公演に集中する構造で、中小主催者は依然として「市場は伸びているが自分の公演は厳しい」という体感の乖離に直面する可能性が高い。

注目サービスの動き

各社の動向を、サービス選定の観点から整理。

ぴあ:市場データ発表と大型IP販売の両軸で存在感

ぴあ総研の市場データ発表と、東京ゲームショウ2026の10社連動販売参画で、業界のインフラとしての存在感を強化。ぴあ株式会社の企業体としての情報発信力と、ぴあアプリのユーザー基盤の両方が、他社との差別化要因になり続けている。

ACTぴっと:「永年5.5%」既存ユーザーキャンペーンが継続、新規は通常料率6.5%へ

2025年6月30日までに登録した既存ユーザー向け「永年5.5%」キャンペーンは既に受付終了。現在は通常料率6.5%が新規登録の標準となっている。既存ユーザーは今後も5.5%で継続利用可能。連携メディアの「小劇場チケット販売完全ガイド」など、主催者教育コンテンツの発信は継続中。

こりっちチケット!:V1終了まで半年、V2移行が本格化する時期

V1サービスは2026年12月31日終了まで残り約6か月。既存ユーザーは移行手続きを急ぐタイミング。V2では関係者管理機能の強化、決済手段の拡充、CoRich舞台芸術!との連動深化が進んでおり、舞台特化型としての強みをさらに磨いている。7〜8月は夏興行シーズンで運用リスクが高い時期のため、繁忙期を避けての早めの移行が推奨される。

大手プレイガイド共通:東京ゲームショウ10社連動販売への参画

ローチケぴあイープラスセブンチケットが、東京ゲームショウ2026の一般公開日チケット10社連動販売に参画。大型IP興行における「複数社並列販売」という新スキームで、主催者は購入導線を最大化しつつ、各社の会員基盤にリーチできる。舞台公演でも、大型IP舞台化ではこの手法が標準化する可能性がある。

編集部の今月の視点

「市場は伸びているのに現場が厳しい」——二極化がさらに進む業界の構造

ぴあ総研の統計上、市場は過去最高を更新中。しかし、中小主催者の体感は必ずしも「好況」ではない。この乖離は何を意味するのか。

今月ぴあ総研が発表した2025年8,564億円 / 2035年1兆円台という数字は、業界全体としては朗報だ。しかし、その裏側で「舞台技術者不足」「中規模ホール不足」「施設老朽化」という供給側のボトルネックが明示されたことは、業界の構造的な問題として重い意味を持つ。

端的に言えば、市場拡大の恩恵は大型・高単価公演に集中し、中小公演は「同じ舞台技術者・会場・スタッフを取り合う」構造に置かれる。今月報じた東京ゲームショウ10社連動販売、大型IP舞台化の集中は、その象徴だ。1つの興行に膨大なリソースが投下される一方、100〜300席規模の小劇場公演はスタッフ確保・会場押さえの難易度が相対的に上がっている。

では、中小主催者に打つ手はないのか。編集部の見立てはこうだ。「運営工数の極小化」と「顧客資産化」の2軸で、大手興行と別の勝ち筋を作る——これがサステナブルな舞台芸術の現実解になる。運営工数の極小化は、ACTぴっとこりっちチケット!の関係者管理・当日精算・受付運営機能で実現できる。顧客資産化は、主催者が自前で顧客リストを持つ——大手プレイガイドの会員に依存しない集客チャネルを育てる——ことで進む。

市場が過去最高を更新する時代だからこそ、「規模の経済」に流されず、「独自性の経済」を追求することが、中小主催者の生き残り戦略になる。5月号の「創客」、6月号の「邂逅」に続き、7月号は「独自性」を編集部のキーワードとして提案したい。

来月の注目ポイント